プロフィール
鮫島卓 Taku Sameshima さめたく
旅人(世界75ヶ国)
駒沢女子大学 観光文化学類 教授
帝京大学 経済学部 観光経営学科 兼任講師
ANA旅と学びの協議会アドバイザー
澤田経営道場 「イノベーション論」講師
第2次稲城市観光基本計画策定委員長、稲城市観光協会顧問
種子島宇宙芸術祭オブザーバー
略歴
1973年鹿児島県生まれ。立教大学大学院観光学研究科博士前期課程修了。専門は観光学。研究領域は欧州中小都市の観光まちづくり・都市農村交流・食文化、観光経験の心理変容と教育効果。世界75ヶ国を訪れた旅人。1996年HIS入社。同社で経営企画、ツアー企画、エコツーリズムデスク所長、ハウステンボス再生担当ほか新規事業開発。「旅行」と「教育」を結合させたスタディツアーの取組みで観光庁長官賞受賞。国際協力機構(JICA)のコンサルタントとして観光開発計画策定に從事。2016年より現職。
旅と私 少し長めの自己紹介
私が旅や世界に関心を持つようになったきっかけは、9歳時の「白船来航」事件に遡ります。鹿児島県坊津町という小さな漁村で生まれ育ち、祖父も漁師です。いつものように夕方、近くの港で魚釣りをしていたら、見たこともない白い大きなヨットがやってきて、4人の白人の家族が上陸してきました。それが私の初めての外国人との出会いです。小さな少年には衝撃的な事件です。2年かけて世界一周をしているというオーストラリア人の母親に「旅は学び」だと言われたことが、世界を旅をしたいと思うようになった原点です。またそのことが旅と学びついて研究するきっかけにもなっています。
田舎者の性分で山歩き、釣りも好きです。ちなみに映画はスターウォーズなどSFが好きで、研究室にはR2-D2とBB8の模型もあります。小学校から高校まで野球一辺倒の生活だったせいか、東京の大学に入学後、目標を見失って彷徨っている時に、友人に勧められて旅に出ます。今考えると自分探しの旅です。最初の海外旅行はメジャーリーグベースボールを観戦するため全米一周の2か月の放浪ひとり旅。チープな旅で野宿やプチバイトも経験しました。以来、欲望に任せてアジア、中東、アフリカ、世界一周を含めて70ヶ国以上行きましたが、中でもイタリアの農村が最も好きです。美しい景観、地産地消の質の高い美食、そして住民の地元に対する誇りは本当に痺れます。レンタカーを借りてのんびり田舎道をドライブしながら、ワイナリーやチーズ農家を訪ねたり。
旅で楽しみはいろんな人に出会うことでした。不思議なことに、ボディランゲージと雑な外国語でも何とかなるものです(出川イングリッシュが証明していますね!)。英語が通じない国にもたくさん訪れましたが、必ず「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」の3つは英語ではなく現地語を必ず使うようにしていました。自分のニックネームを現地語風にアレンジすることも異文化の人々と仲良くなる秘訣です!
しかし、旅をしていて一番困ったことは、出会った人から日本のことを聞かれる度に、全く答えられず、自分の無知さに幻滅したこと。それが私自身の学ぶ意欲につながっているように思えます。知らないことを恥ずかしがる必要はありません。知らないことを知る「無知の知」は、好奇心の源です。その意味で、旅は生きた知識を得る最高の道具です。教師が学生に問題を与えて学生はそれを解くのが学校だとすれば、旅は自分で問題に気づかせてくれる。旅は主体的な学びの学校です。遠い世界の出来事とはいえ、自分の身近な生活と必ずつながっています。旅は、物事を自分事化する経験なのです。
学者とは学び続ける人のことです。大学の授業は、教員が学生に教えるだけではなく、学生から教えてもらえる場でもあると思っています。授業はいつも楽しく対話をしながら進めています。死ぬまでたくさん旅をして、たくさんの人に出会い、そしてたくさん本から学び続けたいと思っています。
研究分野
①研究領域:地域の観光地化の起源、イタリア中小都市のまちづくりと観光開発(テロワール、テリトーリオ)、都市農村交流、食文化(スローフード、ガストロノミア)
私の関心のひとつは、地域における観光地化の起源です。どんな有名な観光地も、元をたどると「観光地」ではありません。様々な要件が重なって、観光客を引き寄せる観光地に変容してきたのです。観光地化とは何か、またその要因や背景とは何か。それがわかれば今は無名の地域でも、観光によって地域を活性化できる可能性があるということになります。
最近は、イタリア中小都市を対象にした研究を進めています。なぜイタリアかと言えば、南北に長い国土や地形、季節や気候、近代化からの発展段階、多様な食文化、都市化と過疎化など日本との共通点が意外にも多く、比較研究をしやすいと考えているからです。特に、イタリア中小都市のテリトーリオ(地理的、歴史的、文化的な個性を共有する土地)とツーリズムの関係、そしてその日本への応用について研究を進めています。
②研究領域:旅と学びの関係、観光経験の教育的効果
実は、もともと私は人見知りで、自分に自信が持てない大学生でした。鹿児島の小さな漁村の田舎から出てきて都会暮らしの環境になかなか慣れずに、アパートで引きこもりがちで読書が日課の日々でした(笑)。そんな私を変えてくれたのが旅です。学生時代に1ヶ月かけて全米一周したことを契機に、もっと世界を見てみたいという欲望に任せて旅し、気が付けば75ヶ国も訪れています。また、旅をする度に少しずつ自分が変化していることに気づくようになりました。
旅や観光は一見、遊びの領域と思われがちですが、古くから学びの効用が期待されてきました。日本では「かわいい子には旅をさせよ」という言葉がありますし、また修学旅行は世界には例も見ない日本独自の観光文化です。また近世英国では、貴族の子弟たちによる大人になる通過儀礼として「グランドツアー」という大陸旅行が盛んに行われました。
もっと歴史を遡れば、原生人類ホモ・サピエンスはアフリカから旅をして遊動しながら世界中に拡散していきました。20万年の人類の歴史の中で定住社会へ移行したのが約1万年前。私たちの定住生活は20万年の歴史から考えれば、10本の指の1本分にもなりません。移動することを本性とする人類は、旅を通じて進化してきたともいえるかもしれません。旅を探究ことは人間とは何かを知ることでもあるのです。ですから、観光教育は、観光産業の職業教育という側面だけではなく、人間を知る教養でもあり、旅人養成のためにもあるというのが持論です。
これまで旅の学びの関係、つまり観光経験の教育効果は経験的に語られてはきたものの、科学的に検証されてこなかった領域です。観光経験の教育的効果、つまり旅の何が人の何を変えるのか旅と学びの関係性が僕の研究テーマのひとつです。そうしたこともあり、僕はANAが事務局を務める旅と学びの協議会のアドバイザーとして、企業との共同研究や普及活動を行っています。
大学での担当科目
観光文化入門(教養科目)、観光マーケティング論、観光政策論、旅行業実務論、海外旅行研修、国内旅行研修、国内インターンシップ実習
《研究論文》
・論文『旅行企業の経営戦略~経営戦略が生産性に与える影響~』,2003
・論文「旅行商品におけるカーボンオフセットと地球環境保全の取組み」『企業の CSR 最前線』交通新聞社,
・論文「低成長時代の観光のまなざし」『国立公園』自然公園財団,
・論文『ツーリズムを活用したイノベーション創発に関する研究』駒沢女子大学研究紀要,2019
・論文『創造的消費者との共創による旅行商品開発に関する研究』駒沢女子大学研究紀要,2020
・論文『観光経験における感動分析の試論』駒沢女子大学研究紀要,2020
・論文『観光の動的螺旋の相互作用とふりかえりによるツーリスト・リテラシーの技能』日本国際観光学会自由論集Vol.5,2021年9月
・寄稿論文『文化観光を活用した持続可能な観光再生戦略』一般財団法人北海道東北地域経済総合研究所NETT2021年10月号
・論文『コロナ禍における遠隔授業の可能性と限界』駒沢女子大学研究紀要,2021
・論文『遠隔授業の可能性と限界~駒沢女子大学観光文化学類を事例に~』日本観光ホスピタリティ教育学会,2022年3月
・書評論文『観光のレッスン――ツーリズム・リテラシー入門』日本観光ホスピタリティ教育学会,2022年3月
・論文『原子力災害被災地のミュージアムと教育旅行の可能性』日本国際観光学会自由論集Vol.6,2022年10月
・『観光デザイン論と観光研究』駒沢女子大学教科書シリーズ,2021
・『旅行業実務論』駒沢女子大学教科書シリーズ,2021
・『観光マーケティング論』駒沢女子大学教科書シリーズ,2019
・『観光政策論』駒沢女子大学教科書シリーズ,2019
・『謎解き稲城の歩き方』インターメディアリー,2022
《所属学会》
・日本観光研究学会
・日本観光ホスピタリティ教育学会
・日本国際観光学会
・日本マーケティング学会
・日本感性工学会
《主な講演実績》
・2017年ツーリズムEXPO「持続可能な地域観光開発セミナー」ファシリテーター
・2018年東京地下鉄メトロの卵 講演「観光におけるイノベーション」
・2018年稲城市観光シンポジウム 講演「観光振興とシビックプライド」
・2019年全国市議会議長総会 講演「世界目線の都市観光政策」
・2019年ハワイ会ジャパン講演「ハワイ観光を再考する」
・2019年種子島大学主催観光シンポジウム講演「観光を活かす7つのポイント」
・2021年 稲城ツーリズムカレッジ「文化観光が地域個性をつくる」
このホームページには、僕が関わってきた様々な研究情報、教育情報、イベント情報が、日々、掲載されます。
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鮫島卓 さめたく
Taku Sameshima
《連絡先》
駒沢女子大学 観光文化学類 606研究室
東京都稲城市坂浜238
鮫島 卓
mail: t-sameshima@komajo.ac.jp